海のごみ

イラスト ののはら りこ

 小学校の夏休みの宿題で、海藻の標本作りをした。毎日、だらだらと時間をつぶしているわが子の様子を見るに見かねた母の発案だった。海藻の採集は母と私。標本作りの指導と製作は母上。海藻の名前を調べるのは母上様。標本を模造紙に並べてまとめ上げたのは、母上大明神であった。

 当時の賀露海岸(鳥取市)は、砂浜から沖の島まで堤防でつながっており、歩いて島に渡ることができた。砂浜に打ち寄せられた海藻だけではもの足りず、堤防の岩間や島のあちらこちらで海藻を集めた。岩間には、川の上流から流れ着いた雑木や空き缶などに混じって息絶えた動物なども浮いていた。そんなごみは気にもしないで、ごみの下に潜ってよくも海藻を採っていたものだ。

 時効にしてほしいが、昔は家庭のごみを川や海によく流していた。魚の餌になると思って誰も気にもとめなかったし、そんなしきたりがあったと耳にしたことがある。今では、流れ着くごみの種類はずいぶんと変わり、国際色豊かなプラスチック容器や正体不明のごみも多い。砂浜を眺めながら、おおらかだった時代を懐かしく思う。

 私も父親になり、夏になると娘たちを海水浴に連れていった。娘の成長とともに、砂浜の姿もそれを見つめる娘のつぶやきも変わる。

 幼いころの娘 「ねぇみて、綺麗な貝を見つけたよ。おもしろい形のビンもあったよ。」
 少し成長した娘 「海のごみって嫌。汚いし変なものも入っているから。」
 生意気になった娘 「わが家を漂着するおやじの部屋よりひどいわ、これ!」

 ん、海岸より汚い部屋。
 しかも「我が家を漂着」って・・・。
 
日本海新聞 ECO STYLE Tottori 2011.7.25掲載 一部修正加筆

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