高城だっしゅ村
イラスト ののはら りこ

 鳥取県中部の山あいに、地図に名前が載っていない“村”がある。その名は「高城だっしゅ村」。テレビ番組のものまねだと笑わないでほしい。この村には、多くの人の想いが詰まっているのだから。

 村のはじまりは、子どもの頃に遊び足りなかった年配おやじたちの「夢」からであった。
 「野山に昔遊んだ記憶を思い起こすような遊び場がほしい、それも多くの子どもと一緒に遊ぶことができる基地をつくりたい」というものである。

 村に役場をつくった。山から木を切り出し、石ころだらけの地面を掘って柱を立て、壁板を張った。村旗を掲げるポールも立てた。近くの川にはプールもつくった。年配おやじの「夢」に共感した地域の人たちは、年に一度の大切な地蔵祭りの開催日を変更してまで、だっしゅ村の催しに付き合ってくれた。

 この辺りは、典型的な過疎地である。子どもの数は非常に少ない。そんな所に多くの子どもたちが集まり、谷間に笑い声を響かせてくれるのだから嬉しくなる。「高城のすばらしい自然の恩恵を受けながら、忘れられがちな暮らしや生活の知恵を受け継いでいこう!」と、地元の若いおやじたちも一緒になって村づくりを進めている。

 仕掛け人の年配おやじに「子育てが地域づくりに繋がるすばらしい村づくりですね」と話すと、「なあに、楽しんでいるだけだよ」とそっけない返事。とかくさまざまな障壁にぶつかる子育てや地域づくりであるが、この村には課題を解くキーワードが潜んでいるような気がする。
 
日本海新聞 ECO STYLE Tottori 2011.3.29掲載 一部修正加筆

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