おやじの大義
イラスト ののはら りこ

 世の妻たちは、時としておやじに納得し難い役割を突き付ける。
 「力仕事はおやじの役割。だから庭掃除はあなたの役割」と妻。なんやら役割論の拡大解釈のような気もするが、心やさしいおやじたちは愚痴をこぼさずせっせと働く。そのうち「庭掃除はあなたの役割だから、庭に置いたゴミを片付けるのもあなたの役割よ」と見事な理論を展開し、我が家の廃棄物処理システムを作り上げる。このシステムはやがてルール化され、おやじの反論余地は完全に消える。

 よくよく考えてみれば、家事や洗濯はお母さんの仕事というのも似たような話であるし、ことさら話を荒立てて墓穴を掘ることもない。難しい役割論は無視して、大切な家族のためにと、せっせと掃除に励むのである。

 妻たちの例に限らず、税や年金など社会のあちらこちらで役割が議論される。今の時代、本来果たすべき役割も新たに追加される役割も自分のものと自覚することが難しくなった。こんな時こそ、幕末の志士のごとく大義の旗が必要かもしれない。

 猛暑だった今年の夏。地球温暖化もその一因といわれている。科学的な検証は専門家に任せるとして、今の化石燃料依存の社会スタイルが長く続くとは思えない。なによりもこんな猛暑はこりごりだとつぶやくおやじは、温暖化防止のために少し動いてみようと考える。もちろん苦手な役割論ではなく“大切な子どもたちの未来を守るために”という大義の下に。
 
日本海新聞 ECO STYLE Tottori 2010.9.29掲載 一部修正加筆

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