東郷池の雪景色は、私の好きな鳥取県の風景の一つである。
風物詩の一つである四ツ手網に舞う雪の向こうに、東郷池の歴史が見えるようだ。かつて池中に浮かんでいた温泉地「龍湯島」の影。この地に住んでいた芸者「葉玉」の美しい声と三味線の音。大隈重信や小泉八雲、志賀直哉など湯治に訪れた多くの著名人の姿が浮かぶ。
ところで今の東郷池には、幻影ではなく、これから東郷池の歴史を刻もうとする人たちの姿がある。その一つが、東郷池をこよなく愛する地元のおやじ一団だ。東郷池の畔に子どもたちを集めてプレーパーク(子どもが自分たちで工夫して遊びをつくり出すことができる場)を開催しているが、昨年のイベントには、地元のお母さんや女性教職員、保育士さんのグループなども加わった。今年は、この活動が他地区へも広がるとのことである。
もう一つ、気になる一団がある。以前勤めていた職場の方からいただいた情報によると、その一団の合い言葉は、「愛らぶ東郷池」。写真には、地元の漁師さん、長年東郷池の環境保全に熱心に取り組んでおられるNPOの皆さん、小学校の先生、県職員や町職員の皆さん、そしておやじに囲まれて一生懸命水草運びに汗を流している子どもたちの姿があった。
環境保全活動は、環境そのものを良くする活動ではあるが、環境を良くしたいと思う心を育てる活動でもあり、ひいては地域を愛する心を育てる活動である。だから東郷池を愛するおやじ一団は、お母さんたちと一緒になって地域の中で子どもを一生懸命遊ばせる。子どもたちは、この遊びの中でたくましい創造力や思いやりの心を育む。近い未来、この子どもたちの中から、ふるさとのまちづくりに取り組む若者が出てくるはずである。
地域には、子育て支援、環境保全、男女共同参画推進、地域づくりなど様々な団体があるが、もし「子どもたちの未来のために」という理念を共有することができれば、それぞれの団体の活動趣旨に反することなく、共に同じ活動ができるのではなかろうか。
東郷池の畔で活動するすばらしい人たちは、きっと新しい歴史を水面に浮かべるに違いない。
|