ラグビーワールドカップ2019日本大会では、日本チームが番狂わせと言われるほど素晴らしい戦いを繰り広げた。ラグビーは巨体が激しくぶつかり合う荒々しいスポーツだが、実に紳士的で深い趣がある。
紳士的である理由の一つが「ノーサイド」。試合が終われば敵味方の区別がなく互いに健闘をたたえあうという精神を持っている。深い趣とは、明治大学ラグビー部北島忠治元監督の教えである「前へ」だ。
「苦しくても辛くても、とにかく前へ進め」と聞くと叱咤激励のように聞こえる。しかし「どれだけ前へ進んだのか」を問うのではなく、「少しでもいいから前を向いて動けば、それがゴールへ最も近い道」というものだ。
だから悩んだりつまずいたりした時は、僅かでも前へ動いてみたい。圧し潰されるのは当然と考え、結果がどうであれ最後は「ノーサイド」と他人も自分自身もたたえてやれば、不思議と気持ちが楽になる。社会の荒波に挑む若者たちに、ぜひ伝えたい教えである。
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