川べりで
 


お墓参りへ行く途中、川べりで釣りをしている若者に会った。水の濁りは確かに一時期より良くなったものの、とても魚が釣れるとは思えない。冷やかし半分で釣り糸を見ていると、ビシッという音とともに魚影が跳ねた。

魚を手繰り寄せる若者に「ウグイ?」と尋ねると、「セイゴです」と笑顔。「塩焼きにできそうですね」と感心すると、「まだ小さいですから」と言って放してやった。私も子どもの頃、この川でセイゴを釣り上げたことがある。先ほどのセイゴより小さかったけれど、母が塩焼きにしてくれて、それがとてもおいしかった。

この川べりは、昔は造船所が建ち並び、たくさんの小舟が係留されていた。わが家ではお盆になるとお墓参りの親戚が集まり、子どもたちは仲良く一緒に釣りや花火、肝だめしを楽しんだ。そういえば私の子どもたちも、墓参りの後、親戚のおじいさんたちにこの川べりでよく遊んでもらったものだ。

川べりの景色はずいぶんと変わり、お盆に集まって騒ぐこともなくなった。夢中で遊ぶ子どもたちをやさしく見守ってくれていた親戚のおばさんが、この夏、息子さんの暮らす都会へ移り住むとのこと。川べりの歓声が遠くで聞こえたような静かなお盆だった。

 川遊びの思ひ出話す盆休  正子


 日本海新聞 2018.8.31掲載


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