テクノロジー


携帯電話を使い始めて、家の固定電話を使うことがほとんどなくなった。スマートフォンに変えてからはその存在さえも忘れている。よくよく考えれば、この数十年間の電話の発展はめまぐるしく、先日までの最新テクノロジーがあっという間に時代遅れになっている。

もっとも電話があまり好きでない私は、スマートフォンをポケットに突っ込むだけで、電話がかかってきても気づかないことが多い。ある日、同じ人から数回の着信記録があった。さすがに気になって固定電話からスマートフォンに電話を入れると、やはり着信音が鳴らない。

急いで販売店に駆け込み、「スマホが壊れて着信音が鳴りません」とおやじ。いぶかしそうな顔の店員さんが画面を睨んだ後、「おやすみモードに設定していたら着信音は聞こえません」と一言。基本操作には無関心で、役立つはずの機能にも興味がないおやじの失敗である。

丁度、ダン・ブラウン著「オリジン」という本を読んでいた。人類誕生の謎と未来の解明がモチーフで、人間とテクノロジーの融合が様々な争いや災いを克服するといったテーマだ。共感しながら読み終えたものの、おやすみモードも知らなかったおやじには、最新テクノロジーは猫に小判だったことを知った。


 日本海新聞 2018.3.23掲載


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