しゃべった


昨年の暮れ、おやじの部屋のエアコンが壊れた。リビングのエアコンで暖まれば問題ないと思ってそのまま放置しておいたのだが、早寝早起きのおやじと夜遅くまで談笑している家族とは生活時間帯が異なる。自分の部屋へ戻ることを強く勧められ、やむなくエアコンを買い替えることにした。

正月早々、工事屋さんには申し訳ないと思いつつ取替工事をお願いした。工事が終わった後、おやじの固定観念では到底理解できない複雑な機能と使い方を教わり、スイッチを入れてびっくり。「暖房を開始します」とエアコンがしゃべった。

驚いているおやじに「うるさかったら止めましょうか」と工事屋さん。ちょっと考えて「年を取ると誰も相手をしてくれないから丁度いいかも」とおやじ。少し間をおいて「でも返事はしてくれませんよ」と気の毒そうな工事屋さん。

難しい単語が並ぶ説明書は見ないし、近年の技術進歩を知ることもできそうだとそのままに。もしかしたら話し相手になってくれるかもしれないなどと工事屋さんを疑いながらあれこれスイッチを押してみた。しかしそのうちエアコンの声がだんだんと不機嫌になり、小言の多い家族が一人増えたような気がして、結局、おしゃべりをやめていただいたのである。


 日本海新聞 2018.1.26掲載


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