科学の心


理科に対する興味や関心が少ない子どもが増えたことがきっかけで、鳥取大学の先生が「とっとり科学の祭典」という科学遊びイベントを始めたのが20年前。その後県内各地の先生や科学大好きおやじが集まって、毎年子どもたちと一緒に科学遊びに興じている。

確かに数式や化学式を見ると腰が引ける。とりわけ理解しなくても科学技術の成果は私たちの生活にしっかりと浸透しているし、意識せずともその恩恵を存分に享受できる。ことさら構えて科学に向かう必要もなさそうだが、それだけではもったいないというのが科学者の教えである。

科学は、自然の原理をひも解く学問だ。その思考には「なぜ(Why)?」ではなく、「どうして(How)?」という問いかけが求められる。例えば「なぜ雪が降るのか」と問われれば「冬だから」と答えれば十分だが、「どうして雪が降るのか」となると物理学や気象学の知識が必要となる。

しかし知識を磨くばかりが科学ではない。思い込みや既成概念を横に置き、何が真理なのかを考える姿勢こそが大切な科学の心であり、その心を鍛えるには仮想空間から離れ、現実の中で身体を使って遊ぶことが一番とのこと。その教えを忠実に守るおやじは、結局今年も遊びだけに夢中の一年だった。


 日本海新聞 2017.12.22掲載


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