早朝まだ薄暗い雨模様の中、防寒着に刈込バサミを持って鳥取港に向かった。カニのシーズンを迎えた鳥取港では、年末に様々なイベントが開催される。この港へお見えになるお客さまが気持ち良く楽しめる環境にしようと、地元自治会が呼びかけた草刈り作業に参加するためだ。
集合場所に着く頃、雨足が強くなった。気がつけば携帯電話に作業中止とのメールが入っている。少し残念な気持ちで港湾まで足を延ばすと、岸壁に5隻の漁船が並んでいた。静かなセリ市場には発砲スチロール箱が積まれている。中身はもちろんカニに違いない。
実は私は、この高価なカニにあまり興味がない。子どもの頃、実家が造船所だったこともあって漁師さんからよく海の幸を頂いた。この時季「おかあちゃん、おやつ」とねだると、大皿に高く盛られた親ガニが出てきた。夕食のおかずもおやつもカニだった。しかもほぼ毎日。
学生時代、東京の友人にこの話をすると誰も信じない。面白いことに鳥取で話をしても、皆信じられないという顔。カニ三昧だった子どもの頃を思い出し、急にカニを食べたくなった。さっそく開店早々の魚屋さんに行くと、店内は既にお客さんで一杯。今度はカニよりも草刈りが気になったのである。
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