お 盆



ご先祖さまを供養するお盆のお墓参りは、幼い頃から義務感ばかりの慣わしだった。特段楽しいことがあるわけでもなく、忙しい大人たちに連れられての義務の履行だ。もちろんお墓の中のご先祖さまがいったい誰なのかと興味を持つこともなく、ただ線香をあげて拝むだけだった。

父が亡くなって数年ほど経った頃、ふとしたことからご先祖さまのことを調べてみる気になった。最初にお墓に入ったご先祖さまは、幕末から明治の激動の時代を生き抜いた高祖父の長男。その後ほぼ順当にお墓仲間が増え、今では約10名のご先祖さまを祀っている。

調べていくと、それぞれの時代を生き抜いたご先祖さまの人間模様が見えてくる。残った写真から何となく人となりもうかがえる。そうなると義務感だけのお墓参りでは申し訳ない。離れて暮らす家族と一緒に線香をあげながらご先祖さまのことを話し聞かせるのだが、やはり興味はなさそうだ。

賑わったお盆の街は、帰省ラッシュと共に元の静けさに戻る。「そのうち私も義務感だけのお墓参りをしていただくのだろうな」と苦笑しながらご先祖さまの資料を整理していると、「帰省ラッシュに苦しまずとも、この街に住めば簡単に義務が果たせるものを」とご先祖さまも苦笑したような・・・


 日本海新聞 2017.8.25掲載


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