毎年恒例


新年度になったのだから、気持ちを一新して何か新しいことでもやってみたい。しかしこの時季は、毎年恒例の前年度の後始末から始まる。決算作業やら報告書づくりやらと、前年度の反省と後悔を一とおり味わった後でなければ、次の段階に進むことができない。

後始末の目途がつくとようやく新年度の準備となる。既に気力も体力も使い果たしているから、「まあ前年度と同じでいいや」とついつい手を抜いてしまう。頭の片隅で「たぶん来年度も反省と後悔から始まるだろうな」と感じるのも、結局そのままになってしまうのも、恒例である。

少しは変化を考えなければならない毎年恒例であるが、一方で変化してほしくない毎年恒例もある。例えばお花見や春祭りだ。変わらない風景の中で艶やかに咲く花に感動し、聞きなれた太鼓の音や普段会えない友人たちとの会話に安堵し、変わらない新年度を迎えたことに感謝する。

そして「反省と後悔から脱するために変化を求め、変わらないものから安堵と気力をいただく」というおやじ流の極意を得るわけであるが、よくよく考えれば、貯まった宿題にいつも悩まされ、早く逃げ出して友だちと遊びたかった子どもの頃とまったく変わっていない極意であった。

 日本海新聞 2017.4.28掲載


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