日が少し長くなったことに気づき、時折暖かい風を感じると、「春になったなあ」とあまり意味のない安堵感を覚える。いつもならこの時期は庭の枯草を掃除し、猫の額ほどの畑をつくってジャガイモを植えたりする。しかし今季は、まったくその気にならない。2月に降った大雪で、ささやかな楽しみであった庭の花木が、ボキボキに折れてしまったからだ。
もともと貧相な庭木ではあるが、あちこちにぶら下っている枝を見ていると、片付ける意欲はまったく無くなる。90p以上も積もった雪に土中のモグラも苦しかったのか、家の周りの地面がデコボコに荒らされ、意欲喪失に追い打ちをかけた。
しかしこの程度なら、地震や津波の被害と比べれば微々たるものだ。それでもしょげてしまったのだから、6年前の東日本大震災や昨年の熊本地震、鳥取県中部地震の被災地のご苦労は、本当にすごいものだったのだなと改めて感じた。
サクランボの太い枝も、真ん中から折れてぶら下っている。よく見ると、折れた枝に花芽が膨らみ、ピンクの花もいくつかついて、「また春がきたぞ」と念を押しているようだ。ようやく庭掃除を始める気になり、少し遅くなったけれどジャガイモの種芋を買いに行ったのである。
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