小学校記念誌


ほこりだらけの本棚の奥から、私が通った小学校の創立百周年記念誌が出て来た。創立は明治6年。それまで寺子屋であったお寺の庫裏(くり)と神社宮司さんの家屋を使い、男性108名、女性17名、計125名が入学したと記録されている。

最も古い卒業写真は大正4年。着物と袴で正装した子どもたちは、やけに大人びて見える。昭和初期の木造校舎は重々しく、今は取り壊された鉄筋校舎が懐かしい。暗くなるまで遊んだ校庭、学芸発表会や町民大運動会の光景はしっかりと記憶に残っている。

巻末の卒業生名簿の最初の記録は明治20年卒。途中空白があるものの、明治43年卒からはきちんと残っていて、名簿を追っていくと見慣れた地元の名字が繰り返し表れる。私の祖父母、父や叔父叔母の名を見つけた。兄姉や幼なじみの友の名も、つい先日のことのように並んでいる。

記念誌に綴られた歴史は、単なる記録や淡い思い出だけではない。この地に生まれ育った人々の足跡は確かに次の世代を見守っていて、この町の繋がりの証に他ならなかった。百年誌が発行されて今年で43年。今朝も元気に登校する小学生を見送りながら、たぶん7年後に発行されるであろう百五十周年誌を楽しみに待つことにした。

 日本海新聞 2016.7.29掲載

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