梅雨は何かとうっとうしい。毎年必ず訪れる気象現象だから、歳を重ねるとともに慣れればよいものを、やはりそうはいかない。ジメジメとした空気は、ただでさえ汚いおやじの部屋に一層の不快感を閉じ込める。寒暖の差や気圧の変化であろうか、頭痛や肩こりもひどくなり、外に出るのがおっくうになる。
梅雨は、家の中に閉じこもらなければならない一年でもっとも不快な季節である。と、世間様に愚痴をこぼすのであるが、実は私は、さほど梅雨が嫌いではない。生来の横着者であるから、梅雨を理由に、動きたくないということを動けないという理屈にすり替えてしまうのだ。
昼酒を楽しみながら聴く雨音は、癒しの音楽だ。花や草木も、雨のリズムに合わせて躍っている。時折差し込む陽射しは、土にも生物にも新たな息吹をもたらすようで、刻々と変化する目の前の光景にわけもなく感動してしまう。
その勢いで子どものようにやがて来る夏に想いを馳せ、梅雨があけたら釣りとかキャンプに行こうなどと達成するはずもない計画を立ててみる。やがて酔いが回って一寝入りし、再び梅雨空を見上げながら「梅雨は何かとおもしろい」とつぶやくのである。
紫陽花や 昨日の誠 今日の嘘 (正岡子規)
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