地元の行事


 今年の神社の春祭りは、街中を御輿(みこし)行列が練り歩く3年に一度の大祭だった。子どもたちが主役の鉾(ほこ)や大名行列、青年が演じる幟(のぼり)武者、そして威勢のいい大神輿(みこし)と、春に繰り返される楽しい行事だ。

 私も久しぶりに行列に参加して、鉾をかつぐ子どもたちのお供をした。我が家の古いアルバムには、大神輿をかつぐ若き日の父や、鉾の横で友と一緒に笑っている小学生の私の写真がある。子どもたちの元気な掛け声に、なつかしさもわいてきた。

 今年の行列には、20数年ぶりに復活したという「お先祓い(はらい)」が付き添った。歌舞伎の隈取り(くまどり)化粧で獅子舞や大神輿の先頭に立ち、大きな竹を振り回しながら女性も子どももお構いなしに大声で怒鳴りちらす。幼かった私は、その傍若無人な振る舞いが怖かった。

 改めてよく見ると、お先祓いのおかげで行列の通り道が空けられ、更には道脇で楽しんでいる氏子さんの安全も守られていた。それは、荒っぽいお祭りに隠された先人の知恵なのかもしれない。地域の文化や伝統を守りながら次の世代へ受け渡すという恒例の行事ではあるが、そこには人間味あふれる地元愛が潜んでいるように思えてならない。

 
日本海新聞 2015.5.28掲載

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