我が家の庭の春は、毎年梅とさくらんぼの開花から始まる。今年もようやく可愛らしい姿を見せてくれた。庭を訪ねてくれる鳥も増え、小さな虫たちも動き出した。となると、俳句の一つでも詠んでみようかと思ったりする。
芸能人がつくった俳句を、俳人夏井いつき氏が酷評するおもしろい番組がある。わずか17文字の世界の中に、よくまああれだけの豊かな感性と言語表現が可能になるものだと感心する。しかし残念ながら、そのような才に恵まれなかった私には、誰も笑わないくだらない駄洒落俳句くらいしか思いつかない。
花を眺めながら才能なしを嘆いていた時、思わぬ質問をいただいた。「この梅はなんという梅?」もちろん知らないし、考えたこともない。植物には様々な品種があり、果実などは品種により味も違うことくらいは知っている。ただ普段の生活の中では、植物は「木」、「花」、「草」という表現で十分事足りた。「今年も木に花が咲いたなあ、草も伸びてきたなあ」といったふうに。
感性と言語表現能力が足りない原因が見つかったような気がして、さっそく梅の品種について勉強を始めた。そして、いとも簡単に諦めた。どうせ次は記憶力の不足を思い知るだけだろうから。
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