もし人生が後5回くらいあったならば、そのうちの1回は音楽家として生きてみたいと思う。ずいぶんと昔には、髪を伸ばし、ギターを持って「人生とは」、「愛とは」と怒鳴っていたような気もするが、今ではほとんど縁がなく、見事な音痴おやじである。
音楽の面白さが何となく分かりはじめたのは、ヨーロッパ在住の演出家宮永あやみさんとの出会いだった。ミュージカル「レ・ミゼラブル」のことを教えていただいた時、「小学校の道徳の教材だよね?」と不躾な質問をしたことがある。コンサートを聴いた後、そのすばらしさに頭を丸めようかとも思った。
その彼女に、今度はオペラについて教わった。ドイツでは、オペラは町の共有財産の一つとして存在しているとのことだ。彼女曰く「芸術をその地の財産とするためには、そこに住む人が自分たちの眼で見守り、育てなければならない」と。
彼女が率いる集団「ムジークテアター・TOTTORI(とっとり)」は、今年の夏、チャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」を公演する。ロシアが舞台の物語を、昭和31年の鳥取の山村に置き換えての演出とのこと。鳥取のオペラを土着芸術に育て上げようという集団の野望に、今からワクワクおやじである。
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