おやじには、おやじの娘と同じほど年の離れた友人がいる。彼女がまだ大学生の頃、子どもじみたおやじの遊びに文句も言わずに付き合ってくれた。就職をして忙しくなり、おやじ達が年をとって動きが鈍くなった時も、酒を抱えて遊びに来てくれた。
彼女の名前は“ののはらりこ(ペンネーム)”さん。おやじの駄本、駄文に、いつも楽しいイラストを添えてくれる。その彼女が、さわやかな秋晴れの大山の麓で結婚式を挙げられた。余計なお世話であるが、まだかまだかと気をもんでいたおやじは、ようやくほっとしたのである。
人間の強さ、優しさは、他人によって磨かれる。たいへんありがたいことではあるけれど、磨かれている間は辛かったり、悲しかったりと苦労だらけ。何かにつけて難しくなる時勢にあって、そんな苦労を楽しみながら、たくさんの感謝を共有できる人と共に生きる人生ほど充実したものはないであろう。
ウェディングドレスの彼女は、ますます美人になっていた。彼女が選んだヤツは、悔しいことに誠実で男らしいヤツだった。二人の立派な姿を見て不覚にも涙を流したおやじの頭には、遊び呆けている我が娘の姿が浮かんでいた。“おいおい娘よ、おまえは大丈夫かい?”
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