学びの道



 得意なものを尋ねられると直ぐにうつむいてしまうが、苦手なものを尋ねられたならば、次々と明快な答えをだす自信がある。最も苦手なものは学問であった。学問は、未来の人や社会を創造する大切な知識であり思考だと教えられた。自分の未来が少なくなってから理解したことを少々悔やんでみたりする。

 日南町石見東小学校跡地の入口に「学びの道」と書かれた門がある。細い坂道を登ると、森陰に二宮金次郎の像を見つけた。金次郎像の多くは銅製であったため、戦時中の金属供出で無くなってしまったが、この像は石像なので難を逃れたとのことである。薪を背負って本を読みながら歩く姿は、学問の大切さを教える象徴でもあった。

 清々しい中国山系を背景に持つこの小学校の跡地には、現在、大規模な太陽光発電パネルが並んでいる。太陽光はどこにでもある地域資源だ。今日のエネルギー問題を考え、地域資源を活かしながら経済の発展を図っていこうと、日南町が建設した発電所である。

 長年子どもたちを見守ってきた金次郎像は、今、この町の新しい未来を見守っている。エネルギー問題が解決され、経済発展を遂げた次の時代には、再びこの学びの道に子どもたちの歓声が帰ってくるような気がする。

 
日本海新聞 2013.08.25掲載

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