春のお祭りは、冬の寒空に終わりを告げ、本格的な春の日差しを迎える節目のように思える。私の町では、伝統ある獅子舞が各戸をまわり、家族の健康と家内安全を祈願する。お祭りの花形は、提灯で飾られた二階造りの屋台だ。「えーらんやっちょい」という独特のかけ声に合わせて、踊り子さんたちが町中を引っ張り、あちこちで踊りを披露する。
踊りの主役は、町内の子どもたちである。青年となって町外で生活を始めると、踊りの輪から外れてしまう。しかし、次の主役の幼い子どもたちが、しっかりと成長した姿を披露してくれるから楽しい。
残念ながら子どもの数はだんだん減り、いつの頃からか大学生の応援が入るようになった。若者の参加により、踊りもずいぶんと華やかになる。お年寄りが増え、少しさみしくなった町に、一時のにぎわいが生まれる。ただ、その中で一緒に踊るおやじたちの顔ぶれは、ほとんど変わらない。
この春の例祭に、私の姉が孫を連れて遊びに来た。姉も小さい頃踊りの輪に入っていた。姉の友人たちが屋台から「おお、帰ってきたか」と声をかけ、孫の好きな踊りのリクエストに応えてくれた。世代は変わっても、ふるさとの風情はおやじたちがしっかりと守っている。
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