大気汚染

 中国では、北京市などで過去最悪の大気汚染を引き起こしているらしい。呼吸器系疾患の患者が急増し、視界不良のため交通機関にも大きな影響を及ぼしているとのことだ。マスクを付けて歩いている子どもたちの写真をみると、なんともやりきれない気持ちになる。

 大気汚染や水質汚濁などの公害は、いずれも経済成長に伴った人災である。日本の公害は、近代産業が発展する1900年ごろから始まり、1960年代に入って大きな社会問題となった。議論の焦点はいつも公害対策と経済成長との調和であり、健康被害や差別に苦しんだ多くの人達の声が届くまでにはかなりの時間が必要であった。

 公害問題が日本人の記憶から忘れ去られようとしている今、原発問題により再び経済成長と人間の基本的な生存権の議論が始められた。いつの世も、世界のあちこちで同じ歴史、同じ議論が繰り返されるというのも不思議な気がする。

 さて、我が家の大気汚染問題もいよいよ深刻化しはじめた。原因はいわずと知れたおやじの煙草である。家族の生存権を守るため、仕方なしに底冷えする庭に出て一服するものの、追い打ちをかけるように経済との調和が求められる。しかし小遣いの削減問題は、そう簡単には譲れない。

 
日本海新聞 2013.01.27掲載

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