ふろしきマントと工事用ヘルメット、紙製フレームに色セロハンレンズのサングラスをかけ、水鉄砲を持って走り回っていたおバカなこどもは、漫画の世界に入り浸っていた昔のおやじの勇姿である。
亡き父より「漫画ばかりみているとバカになるぞ」とよく注意された。当たらずとも遠からずの結末となってしまったが、漫画のせいだとは思わない。ケラケラ笑いながら一日中漫画を読んでいる子どもを心配する、ごく普通の親心だったと理解しょう。
昔の絵巻物や浮世絵なども漫画の類らしいが、今では誰もが優れた芸術品と呼ぶ。漫画文化全盛の現代では、科学や歴史など頭が痛くなる話もわかりやすく伝えてくれる教科書であったり、人生や恋愛を語る文学書であったりする。漫画の主人公に憧れて自分の職業を決めてしまう若者がいるという話も聞くから、その魅力はあなどれない。
更に漫画産業の経済効果もすごいとのこと。この点からも残念ながら私の父の忠告は的はずれだったと整理したい。ただいつも漫画を手放さず、あいかわらず腹をかかえて笑っているおやじに向ける娘の冷たい視線は、いささか気になるところである。
それはさておき、「まんが王国とっとり」の繁栄を祈念するとしよう。
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