おやじたちの子どもの頃のヒーローは鉄腕アトムだった。
白黒テレビの中で悪人をやっつけながら空を駆けるアトムの姿にワクワクし、10万馬力の心やさしい科学の大人になるのが夢だった。幼い夢は難解な物理や化学の前にもろくも崩れてしまったが、科学は世の中を豊かにし、人を幸せにするものだと理解した。
近年の子どもたちの「科学離れ」は結構深刻な話だそうである。
日本を経済大国に導いた科学技術も、世界的な科学技術競争の激化や少子高齢化による人材不足などにより、次世代への不安が指摘されているそうだ。
衣は科学である。
医学や人間工学を駆使した快適な下着や衣服は廉価でいつでも手に入る。直ぐに穴が空くような靴下は見なくなったし、穴の空いたジーンズはファッションだから、母さんの夜なべ仕事のお裁縫は童謡の中だけでよさそうだ。
食は科学である。
新たな食品開発、おいしさや健康に対する科学の追求の手は緩むことがない。食品の安全性は、色や臭いとかではなく、包装に刻印された文字や数字で確認することができるから簡単になったものだ。
住は科学である。
スイッチ一つで一年中快適な温度・湿度を保つことができ、壁に並ぶ電化製品からは様々な情報が流れ込む。買い物もゲームもリモコンからスタートすればことが足りそうだ。
未来の夢を創出し、人間や自然を愛する心を植え付けることこそ科学の役割だと信じているおやじにとっては、今日の科学技術の成果になんやら不思議な違和感を覚えてしまう。あたりまえとなった快適すぎるライフスタイルは、科学の本質を忘れさせてしまうのではなかろうか、子どもたちの「科学離れ」は本当は「科学からの引き離し」ではないのだろうかと。
さて、おやじをただの飲んだくれのぐうたらと思われると心外である。動く時にはきちんと動く。この夏もおやじたちの科学遊びは全開だ。地球温暖化に勢いづく強烈な太陽と戦い、子どもたちと一緒に汗をかきながら工作や自由研究にのめりこむのだ。
よし、今年の夏のおやじの研究テーマは、「屋外における太陽熱の回避手法と含アルコール水分補給がもたらす中高年齢層の腹部への影響に関する研究」としよう。
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