積み木の話

 やぶちゃんの新作木工品は、「積み木」です。
 かなりの時間を費やして構想を練り続けた結果、とにかくたくさんの積み木をつくり、子どもたちに思いっきり遊んでもらおうという結論に達しました。ちょうど子ども科学教室の準備を始めた頃だったので、このイベントに積み木を出してみようという話になったのです。

 毎年、大学や小・中・高校の先生たちが一緒になって開催している子ども科学教室は、主に小・中学生を対象としたテーマが出展されています。スタッフには高校生も加わり、わいわいがやがやのたいへん楽しいイベントです。私は裏方事務局としてお手伝いをしているのですが、常々気になっていたのは「幼児」を対象としたテーマでした。もちろん幼児たちに科学やものづくりのお話をしても無理なのですが、幼児の頃から体で科学心を知ってほしいものだと思っていました。

 やぶちゃんも、なんとか幼児にも楽しく科学を体験させることができないものかと考え、最終的に「積み木」を導き出したのですが、はたして積み木遊びが科学教室といえるのかというヤジも飛んできそうです。

 正直私は、科学教室とかものづくり、積み木のような玩具遊びも、それぞれの意義にあまり差違はないのではないかと考えています。もちろんこれはおやじ流の解釈であり、実際にイベントに参加される先生方は各々いろいろな想いをお持ちですので、改めて議論しても上手く整理することはできないでしょう。特に、学校教育とか家庭・地域教育などといった「役割」などの議論と重なると、それはもう一挙に難しくなります。
 でも難しい議論は、大人の世界だけです。子どもたちの世界では「楽しい遊び」だけですので、いかに楽しさを見つけ出すのか、そのお手伝いができればいいと思っています。



 さて、やぶちゃんが試行錯誤の結果導いた積み木は、材質は杉、もちろん県産の間伐材です。大きさは悩みに悩んで一辺6cmという基準をつくりました。子どもたちが一番遊びやすい積み木を追求した結果です。
 そしてついに完成。数は1,500個。積み重ねてみるとやはり迫力があります。わかとり科学技術育成会が県内3カ所で開催する子ども科学教室でデビューすることになりました。

 実は、この積み木をいくつか試作し、形が決まった後になって知ったのが「恩物」というものでした。恩物は、ドイツの教育学者フレーベル(フリードリッヒ・W・A・フレーベル、1782-1852)が1837年に創作した乳幼児用の教育遊具の総称で、神の恩恵を得て賜ったという意味から『Gabe(独)』『Gift(英)』と名付けられたとのことです。1876年(明治9)に東京女子師範学校附属幼稚園監事(園長)関 信三によってGabeが恩物と訳されました。(参考:yahoo!百科事典)

 恩物は20種類あり、その内の「第2恩物」は木製の球と立法体と円柱体の3個を回転させたり見方を変えることによって、相違点や共通点を理解するというものです。球の直径は6cm、円柱体は直径6cm高さ6cm、立方体は一辺6cmでいずれも木製とのこと。
(参考資料:第2恩物の保育目的 山口大学幼児教育学教室 荘司泰弘)

 びっくりです。
 やぶちゃんが自己流で考えた積み木の材質、大きさ、形が第2恩物とぴったりなのです。もちろんやぶちゃんも私も、恩物をまったく知りませんでした。
 積み木としての教材は、第3恩物から第6恩物にありますが、第2恩物で示されている立方体や円柱体とは異なるようです。でも学者フレーベルが考え出したものとやぶちゃんが考えだしたものが同じだということを知り、楽しくなってしましました。
 

 残念ながら私たちおやじには、どうも「教育」という言葉が似合いません。
 でも、身体全体を使って思う存分遊ぶことには精通しております。
 実際に科学教室で1,500個の積み木を床にぶちまけ、「さあ、思いっきり遊んでみろ!」と問いかけてみたところ、子どもたちの底知れぬ能力をたっぷりと知る結果となったのですから、これも立派な「恩物」で良いのではないでしょうか。
 でも、教育とはかけ離れたおやじが、教材「恩物」をそのまま盗んではいけませんね。
 では、“恩物もどき”としましょう。

 やぶちゃんは、このすばらしい“恩物もどき”の「積み木」を多くの大人に知ってほしいと思い、販売を考えました。もちろん間伐材にこだわっていますし、一つ一つ手作りですので、直ぐに作ることはできないとのことですが、なんとか多くの子どもたちに遊んでほしいものです。
 金額が高いか安いかは、既に販売されている積み木と比べていただければよくわかると思います。こういうのも中国で作れば、もっと安くなるのかもしれませんね。でも大量に販売するマーケットや流通方法などまったく知りませんし、何よりも県産材を使うのだというやぶちゃんの想いを変えることはできないでしょう。

 
おやじのつぶやき 2012.1

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