梨の木のペンたて
 

  日常の生活用品の中でも、ペンたての存在はおやじと同じほど薄い存在です。子どもさんの机の上には必ずといっていいほど置いてあるペンたてですが、多くはプラスチック製のものでしょう。そんなに高価なものでもなく、古くなって買い換えようと思えば直ぐに新しいものに買い換えることができます。
 でも存在感が薄いため、子どもたちも新しいものがほしいなどとおねだりすることはほとんどなさそうです。

 「梨の木のペンたて」はなしの木工房初期の作品で、梨の木の素材がもっとも活きる作品の一つだと思います。ペンたてだけでなく爪楊枝入れなど他の用途のモノもいろいろと作られたようですが、やはりペンたてが一番しっくりするようです。
 おやじは、何故かペンたてに共感を覚えてしまいます。

■ ペンたてキット

 梨の木の廃木を30cmほどの長さに輪切りにし、その木柱にペンを入れるための穴をいくつか開けておきます。この木柱の台にする薄い板を同じく輪切りでつくり、台の上にしっかりと木柱が乗るよう、木柱の底となる部分も整形をしておきます。長い木柱を分割し、更にペンを入れる穴を追加します。
 木柱と台の固定は、ボンドとビスを使います。キットの材料は以上です。

   

   

■ ペンたてづくり

 子どもたちには、ひたすらサンドペーパーで木柱を磨かせます。磨けば磨くほどつやが出てきます。木の中の枯れて割れたような節(死節)や心材(中心の赤い部分)、辺材(周りの白い部分)が味のある形を生み出します。

 ひたすら磨くことによって、“木がこれほどすべすべしてくるのか”ということがわかります。子どもから「いつまで磨くの?」という質問が飛ぶよりも、こちらから「もうそろそろいいんじゃないの」と作業を止めることが多いのもおもしろい話です。

 台と木柱が接触する部分にボンドをつけます。
 この時、ボンドの量について少しだけアドバイスをします。
 「たっぷりとボンドをつけても駄目。ボンドを薄く延ばして下の木が透き通って見える程度が一番いい。ボンドを付ける前には木のくずをよく拭き取っておきましょう。木くずがくっつくのをじゃまするよ」と。子どもたちはこのアドバイスをそのまま受け取り、「これでいいの?」と、ボンドを塗った木柱を見せながら確認を求めます。

 その時、「ほう、上手じゃないか」とほめてあげると満面の笑みを返してくれます。笑みを返さない子どもには、「ぼく、才能があるんじゃないの」と一言追加すると、必ず顔のどこかが動くのがわかります。よくできていても、そうでなくても、必ずやさしい言葉を返してやることが大切ですね。

 そのうち、自分より小さな子どもや上手くできない子どもたちに得意そうに教えている光景にも出会います。これが、おやじが求める遊びです。皆に同じように教え続ける必要は少しもありません。自然に教える子どもや教えられる子どもができ、もくもくとペンたてづくりに熱中する姿が並ぶことが大切なのだと思っています。

 絵を書きたいという子どもも必ず出てきますので、サインペンはいつも準備しています。絵を書き始めた時点で、木の素材をそのまま楽しむという遊びは終わってしまうのですが、子どもたちには好きなだけ絵を書かせることにしています。
 素材自体も、おやじのような存在で十分でしょう。

 そして後は、保護者に心からお願いをするだけです。
 「どうかこのペンたてを使ってください。」

おやじのつぶやき 2012.1

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