変な発明おやじ

イラスト ののはら りこ

 年をとったことを素直に受け止めると、出っ張った腹もさほど恥ずかしいとは思わない。しかし、脂に包まれた我が身に襲いかかる夏の暑さに、毎年のことながら閉口する。海だ山だと走り回っていた若いころとは違い、身体のギアの潤滑剤は、エアコンの効いた部屋としっかり冷えたビール以外に思いつかない。

 ところが、東日本大震災とそれに続いた原発事故により、電気の大切さを思い知らされることとなった。テレビでは節電の呼びかけや、エコライフの提案が頻繁に流されている。この状況でおやじの楽しみを主張しようものなら冷たい視線を浴びることは間違いない。今年の夏が猛暑にならないことをただ祈るのみである。

 私の人生の師匠に、変な発明おやじがいる。鳥取県米子市にあるFUDEN研究所の清水谷繁代表だ。自然から享受するエネルギーをこよなく愛し、自作の風力発電機で発電した電気を自宅で使用している。さらに、動くモノはみな発電に使いたいと考えている。肩をたたきながら発電する「発電肩たたき」、ドアの開閉で発電機を動かす「オートドア発電システム」、散歩の時の腕振りで発電する「ウォーキング発電システム」など、発明ネタは尽きない。

 発明ネタを笑いネタに代えて、自然エネルギーのすばらしさやその大切さを語り続けてきた変なおやじがつぶやく。
 「この災害を契機に、地球に負担をかける時代を終わりにしたいね。」
 私には彼のようなマネはできないが、このたびの教訓は、しっかりと我が身に、我が腹まわりに刻むこととする。
 
日本海新聞 ECO STYLE Tottori 2011.6.25掲載

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