イラスト ののはら りこ

 年末年始に山陰を襲ったドカ雪は、本当にひどかった。年始の挨拶も、雪の被害と除雪作業による腰痛の話に終始してしまった。被害を受けられた方々へ、お見舞いを申し上げます。

 雪の思い出は、なぜかその時の情景が頭の中にはっきりと浮かんでくる。クリスマスにふわりふわりと舞い落ちる雪を見て神聖な心になったような気がしたのは、夜遅くまで遊んでいた学生街でのこと。お正月につくった雪だるまや雪うさぎには、すでに成人してしまった娘たちの歓声が重なる。

 小学生の頃、雪の中の登校は楽しかった。上級生が先頭に立って、足で雪を固めながら道を開ける。下級生はその後をついていくのだが、家の軒先にぶら下がったつららを取るために列を外れたり、前を歩く人の背中に雪を入れたりするものだから、上級生に怒られながらの登校だった。

 小学校のストーブは石炭ストーブ。毎朝、当番がバケツで石炭を運ぶ。一日に使う石炭はバケツ2杯までなどと決められていたため、バケツからこぼれるほどの石炭を持って帰る子が優秀な当番であった。
 お昼前になると、お弁当を石炭ストーブの前で温める。教室がおいしい匂いで一杯になると、もう授業に身が入らなかった。

 思い出し笑いをしながら周りを見ると、炭火鉢や掘りごたつはファンヒーターや電気こたつに変わり、こたつの上のみかんやおせんべいは熱燗(あつかん)と湯豆腐に変わった。しかしこたつの中で猫になって雪を眺めるおやじの姿は、どうにも変わりようがない。

日本海新聞 ECO STYLE Tottori 2011.1.28掲載

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