あっという間


あっという間に年末を迎えた。年をとると一年が速いらしい。世の中の移り変わりが速すぎて、追いつけないままあたふたと暮らしているからだろうか。いくら長寿社会だといっても、これでは人生を楽しめない。

ところが現代だけの話ではなさそうだ。鎌倉時代の随筆家吉田兼好は、「刹那覚えずといへども、これを運びてやまざれば、命を終ふる期、忽ちに至る(短い時間は意識しないといっても、これを繰り返せば直ぐに命を終える時がくる)」と記している。

どうやら一年が速く感じる原因は、世情ではなく自分自身にあるようだ。よくよく調べると、新しい刺激がなく、感動が少ない生活を繰り返すとそうなるらしい。しかし刺激や感動を求めようにも、知力も体力も財力も乏しいから悲しくなる。

このまま一気に人生を終えるのかとつぶやくと、「それでは人間的な魅力がない」とヤジが飛んできた。では来年は、たわいもない日々の出来事に刺激と感動を見つける努力をいたしましょう。

 日本海新聞 2019.12.27掲載

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