べっこうあめ

    


毎年この時期は、こどもたちと楽しんだ科学教育イベントの報告書作成に専念する。学校の先生やおやじたちが工夫した科学実験の記録をまとめるわけだが、中でも県西部で活動している福米東おやじの会が得意とする「べっこうあめづくり」は、こだわりの科学実験だ。

砂糖水をお玉に入れ、七輪の炭火で煮ると次第に水気がなくなり、やがてきつね色を帯びてくる。頃合いを見計らって火から下ろし、冷やせば見事な飴の完成となるが、それなりに技術が必要で、つくり上げた時の満足感は格別だそうだ。

彼らのべっこうあめとの出会いは、17年ほど前、火から遠ざかった現代のこどもたちに火を間近に感じさせたいと始めた焚き火遊びだった。泡立つ砂糖水を真剣に見つめる瞳の輝きに癒され、出来上がった飴のおいしさにほころぶ笑顔を見るのが何よりも楽しいとのこと。

科学的には糖が複雑な反応を起こすキャラメル化という現象だが、そんな説明はおやじには無理。だから報告書も「楽しかった」で括る。今年もそうだろうなと整理をしていると、何故か実験リストに載っていない。案の定、おやじから連絡が入った。「飽きた訳ではない。会場の都合で中止しただけ。でも今年は絶対やるからな」との宣言だった。


 ※ このコラムは、福米東おやじの会N氏のつぶやきを参考にさせていただきました。
 ※ 写真は、ホエホエ隊A氏のフェイスブックから頂戴しました。


 日本海新聞 2019.2.22掲載

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