お医者さん
 


私は、お医者さんが苦手だ。理由はもちろん注射である。ピンやトゲが刺さった場合は、気づかないままの瞬間的災難だから気にはならない。しかし注射は、これから刺すぞ、今から刺すぞと心の準備を迫られるようで、気弱な私には苦行である。

注射嫌いが高じて病院そのものが怖い存在となった。人間ドックや予防接種などやむを得ない場合は死んだ気になって立ち向かうものの、それ以外はできるだけ避けることにしている。メタボや高血圧などいくつかの爆弾と共存しているが、自前の不発処理でなんとか難を逃れてきた。

よくよく考えると、もう何年も大病は患っていない。ありがたいことに私にはいざという時なんでも相談できる心強い「かかりつけ医さん」がいる。この先生にだけは病院の恐怖を感じず、いつでも診てもらえるという安心感があって、逆に病気と疎遠になったと分析している。

叔父であり結婚式の仲人でもある先生が、今年いっぱいで医院を閉じられることになった。半世紀もの間父や母、兄弟、女房子供と、一族郎党の健康を見守っていただき、ただただ感謝を申し上げるばかりだ。さて問題は、今後死ぬまで病院へ行かなくてもよい方法をなんとか見つけなければならないわけだが・・・


 日本海新聞 2018.12.28掲載

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