写  真
 


部屋の押し入れの一番奥にある段ボール箱を開けると、古い写真とネガフイルムの束が詰まっていた。確かに私が撮った写真だ。どれも芸術性は感じられず、かといって記念写真の類でもない。ガサっとまとめてゴミ箱に投げ込んだ。

学生時代、著名写真家の個展を見て感動し、何としても写真技術を習得したいと思って大学サークル写真愛好会に入った。授業は友人に任せ、暗い現像室の中で次々と浮かぶ映像に夢中になった。しかしそれ以上の楽しみもあるのが学生生活。結局満足に技術を習得しないまま卒業した。

眠っていた写真を眺めながら「早く同窓会に来ないと本当に会えなくなるぞ」というサークルメンバーの催促を思い出し、先日ようやく東京で再会した。なにしろ35年ぶりだからお互いが変貌にびっくり。でも直ぐに昔の顔に戻って写真談義とバカ騒ぎを楽しんだ。

後日、現在も個展を開いている先輩から学生時代のスナップ写真が届いた。どの写真にも清々しい若さと思い出が映っている。写真の魅力は移り変わる瞬間を形に残し、その時の喜びや悲しみ、感動を記録するところにある。更にアートや技術を添えることができれば最高なのだが、孫の写真を見てにやけるだけのおやじには無理な話であった。

 日本海新聞 2018.10.26掲載

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