夏 野 菜


まだ風が冷たくても、春の陽ざしを感じはじめると急にそわそわする。この時期、庭先にプランターを並べ、夏野菜を植えるのが恒例となっているからだ。今春も、近所のホームセンターの店頭で苗を見つけると直ぐに、きゅうり、トマト、なす、ピーマンの4種類を買った。

野菜栽培の基本である土づくりは、袋に「よく育つ」とか「おいしく育つ」と書いてある出来合いの土を購入して済ます。肥料も、昔学校で習った記憶のある栄養素がブレンドされている袋を選べばよいだけだから、悩む必要はまったくない。

植えた後は水やりだけに精をだし、病気や虫の攻撃には素直に仕方がないと諦める。そして収穫を迎え、スーパーに並ぶ夏野菜と出来を比べて農家の技に感心する。店頭野菜の値段が安い時はわが家の収穫量も多く、値段が高くなるとまったく採れなくなるというのも妙に納得する現象だ。

土代、水道代などトータルで計算すれば、わが家の夏野菜はたいへん高価となる。しょせん趣味などというものは楽しむことにお金を払うものだ。このおやじの持論は家族には到底受け入れられないわけであるが、たまに立派な野菜ができ、まんざらでもなさそうに食べる顔を見ると、フンと鼻を鳴らしてやるのである。


 日本海新聞 2018.4.27掲載


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