おやじとじじい



子どもを持てば男は誰でも「おやじ」になるわけで、おやじは決して老化やさげすみを込めた呼び名ではない。おやじの最大の醍醐味は子どもたちと一緒に遊び、いや遊んでもらい、子どもたちの成長を楽しむことであるから、「おやじ」は親しみが込められた父親の愛称なのだ。

しかし子どもは、大きくなればおやじと遊ぶより友達や彼氏彼女へ興味が移る。遊んでもらえなくなったおやじは、ますますおやじを主張したくなり、結局、子どもを持って20数年間、相変わらずおやじだと威張り続ける。

ところが、いよいよおやじと呼ばれなくなる日が来た。孫の出現により、長年親しんだおやじが突然「じじい」に変わる。もちろんかわいい孫と遊ぶことができるわけであり、いや遊んでもらうことができるわけであり、自分の子どもと違って成長に責任を負うこともないから、簡単にじじいを受け入れてしまう。

抱っこやおむつ替えも「ほれほれ、じじいにお任せあれ」などと口に出してしまうお気楽な「じじい」は、孫の成長を楽しむことを最大の醍醐味とする男の愛称なのである。ただ間違いなく老化の意味が混じっており、この点ささやかに抵抗し、当分おやじの看板を下ろしてやらないことにする。


 日本海新聞 2017.6.30掲載


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