揺れた


10月21日、鳥取県が揺れた。鳥取県中部を震源とする地震は、補修したばかりのわが家も遠慮なしに揺らした。たまたま庭に出ていたため、ガスを消したり机の下に隠れたりしなくてよかったものの、建物全体が大きく揺れる光景を初めて見た。そして怖さより、お金の心配をしてしまった。

11月8日、世界中が揺れた。次期アメリカ大統領に決まった候補者は、多くの人に期待されていなかったのか、各国にとって難しい人物だったのかよく分からないが、一国のリーダー選出がこれほど世界を揺らすということに怖さを覚えた。

地震はもちろんのこと、世の中に生じる揺れは苦手である。若い頃であればワクワクするような心の揺れでさえ、今では疑心暗鬼が先に立ってしまう。やはり歳を重ねれば常に安定した居場所が欲しくなり、何事もない平穏な日々が一番だと思うのであろう。

それとは別に、お酒を飲みながらの心地よい揺れは大好きだ。鍋の中で揺れる湯豆腐をつつきながら、地震の被害を心配してみたり、日米関係の行く末などを無責任に案じていた時、わが家に激震が走った。震源地は娘である。どうやらおやじに初孫ができるらしい。この揺れをどう受けとめればよいのか、また一つ悩みが増えた。


 日本海新聞 2016.11.25掲載


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