京都の秋空


「大政奉還図」 邨田丹陵 筆


久しぶりの京都の秋空は、青く澄んでとても綺麗だった。これまで何度も歩いた街だが、まだ訪ねていない史跡名跡がたくさんある。世界遺産に登録されている二条城もその一つ。帰りの列車に乗るまでのわずかな時間、多くの外国人観光客に混じって日本の美を楽しんだ。

中でも二の丸御殿の大広間は圧巻であり、ふすまや天井の華やかな障壁画は、徳川幕府の権力を存分に見せつけている。1867年11月9日、最後の将軍慶喜はこの大広間に諸藩の重臣を集めて大政奉還を告げた。しばらく足を止めて偲んでみると、この大舞台の陰に当時の若者の夢や希望が見えたような気がした。

明治維新を導いた志士達の多くは20代30代の若者だった。彼ら若者が志を立て、自分の為すべきことを為した成果が大成奉還である。果たしてそれが彼らの意図するものであったかどうかはさておき、若者の大きな力が世を動かしたことは間違いない。

時代は変わり、若者が志を向ける場面も変わったものの、彼らに潜んでいる底知れぬ力は変わらないはずである。世情に目を向けることもなく暢気に20代30代を過ごしたおやじは、少し反省も込めて、志士達も見上げたであろう青空の下で現代の若者達にエールを送った。



 日本海新聞 2015.10.30掲載

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