植物工場


 鳥取市内の商店街の一角に「植物工場」が出現した。棚に並べられたルッコラやはつか大根の幼い葉っぱを、LEDの光がきらきらと照らしている。工場内は一定の温度と湿度で管理され、農業の専門家に混じって、白衣を着た電気や機械の技師さんがコンピュータに向かっていた。

 畑の農作業と違って作業の負担も少なく、天候や害虫の影響も少ないことから、将来は養護施設や高齢者施設での活用を見込んでいるとのこと。また若手料理人さんが集まる料理クラブや市内の飲食店との連携も始まっている。

 漫画の世界の植物工場は、果てしない宇宙を旅するロケットの中にあったり、ひみつの道具であっという間に育ててしまう夢の工場であった。わくわくしながら想像していた未来の工場が、ご近所のまちなかに現れたようにも思える。

 一昔前の空想の世界は、科学の進歩とともに現実味を帯びてくる。そしてその背景にあるビジネスの創出や社会が抱える課題解決への期待感が進歩を後押しする。だが難しい世情はとりあえず横に置き、LEDの光に揺れながら育つ野菜を眺めていると、心も癒され、あんな野菜やこんな果物も育ててみたいと夢を見る。やはりここは、たくさんの夢を詰める工場に違いない。



 
日本海新聞 2013.04.26掲載

<目次へ>